褥創治療への新しい取り組み(第1回) −療養型病棟での褥瘡・床ずれの治療−

海宝病院は療養型病床を設置しており脳梗塞後遺症やそれに伴う廃用性筋萎縮のため筋力が低下した患者様を積極的に受け入れております。このような状態の患者様のなかには、施設や在宅などにて寝たきり状態になったために、栄養状態の悪化や体圧分散ができずに褥瘡(床ずれ)を形成している方が見受けられます。そこで我々は、そのような方々が入院期間中の当院での生活を快適に過ごすことができるように工夫する一方で、入院期間内に褥瘡(床ずれ)を改善させるための工夫を行っています。

先ず、従来の褥瘡(床ずれ)治療について述べます。『床ずれは看護の恥』という言葉があり、これまでは看護スタッフの問題として取り扱われており、現在でも日本褥瘡学会は看護師が中心となっています。それゆえに医師側の知識不足と古典的な医師絶対主義の下では、医師は褥瘡治療には消極的になりがちで、看護師任せになっている施設が多く見受けられます。一番問題なのは、通常の外傷と同様に扱っている施設が意外に多いことです。具体的には、いわゆる『イソジン』や『ヒビテン』と言われる消毒薬による消毒処置を行うことですが、この処置の欠点は無意味な消毒とそれに伴う医療費の損失、更には創傷治癒反応を阻害するという点にあります。

そこで我々は、褥瘡治療の三原則と称して、@適切なる創傷処置A栄養状態の改善B積極的な体圧分散を掲げ日々積極的に取り組んでおります。

@適切なる創傷処置に関しては、いわゆる消毒薬の使用は細菌のみならず、多核白血球やマクロファージといった貪食細胞や繊維牙細胞を死滅させるために創傷治癒が遅延します。そのため、当院では消毒薬の使用をやめ、普通の水道水(費用が安い)またはアクア酸化水(内視鏡洗浄溶液の流用なので経費がかからない)による創面の洗い流しに留めております。たったこれだけの工夫でも、治り方は格段に違います。

A栄養状態の改善に関しては、人間のあるべき姿としての口で物を食べることを重要視し、腸管での栄養吸収を促進することに主眼をおき実践しています。具体的には、先ず嚥下機能訓練として発声やK-point刺激訓練を行います。どうしても経口摂取不能な方には、食道瘻(PTEG)や胃瘻(PEG)を増設し、早くからの栄養状態の改善に努めています。特に食道瘻(PTEG)を行っている施設は全国的にもまだ少なく、当院での経験数は誇れるものと自負しております。

B積極的な体圧分散に関しては、体位変換や耐圧分散マットレスの使用は言うに及ばず、我々自らが工夫して作成した体圧分散装具(しかも既成品よりも格段に費用がかかりません)を使用しております。これは最近話題のNASAで開発された低反発クッションを用い、一人一人の褥瘡の大きさや形に合わせて、看護師が自ら作り上げたものです。

また、その治癒効果の判定評価もしっかりと行なっています。従来の点数評価法(一部の先進的施設でもこのレベルで留まっています)に加えて、線形判別分析を用いた評価や時系列評価を行なうためにPrincipal component analysis(PCA)による解析など数理的解析を加えることにより適切に評価しております。

以上は、当院での工夫の一端ですが、看護師に留まらず病院の課題として積極的に取り組んでいます。


海宝病院外科 高田 理

褥創治療の取り組み(第2回)